心と心が繋がるコミュニティを創る上で、感情リテラシーは欠かせません。
ピースフルスクールプログラム(PSP)で、子どもたちは、自分の気持ちを知り、自分の気持ちを言葉で伝えること、怒りなどの感情をコントロールすること、他者の気持ちを理解し共感することを学びます。
子どもたちは、とても丁寧に、恐れ、悲しみ、怒り、喜び、驚き等の気持ちを内省する練習を繰り返し、感情リテラシーを磨きます。お互いに、気持ちを伝え合うことを習慣にし、人の気持ちは、同じ状況で同じ場所にいても違うということを、幼児期から学びます。
悲しい気持ちの人がいたら、自分にできることを考え、行動するピースフルスクールのコミュニティは、一人ひとりの感情リテラシーに支えられています。
対立を乗り越える話し合いにおいて、欠かせないのは、怒りのコントロールです。
怒りの温度計をもっていると、今の自分の怒りの温度を理解し、激しく怒っていることにも、自分で気づけるようになります。子どもたちは、10数える、深呼吸する、その場から離れる等、怒りの温度計が高くなった時に、どのようにして、気持ちを落ち着けることができるのかを学び、実践します。
先生は、今ピースフルでない人はいますか などの声掛けで、ネガティブな気持ちを、お互いに共有する機会をつくり、ネガティブな気持ちについても、オープンに話すことができる教室を実現しています。子どもたちは、どんな気持ちも、正直に言葉にできること、色々な気持ちが教室にあることを知りながら一緒に生活することで、誰もが安心して過ごせる教室をみんなで創る経験を積みます。
最近、企業活動でも、心理的安全性の重要性が謳われています。
心理的安全とは、周囲の人に対して、巣の自分を見せることを自分自身が受け入れられる状態で、素の自分を見せても、周囲の人に受け入れてもらえる安心感がある状態のことです。
オランダで授業を参観した際に、子どもたちは、他者の気持ちを自分の物差しで評価しない心を持っていることに驚きました。
オランダの小学校には卒業試験があります。丁度その直前に学校を訪問したので、対話の中である男の子が、こんな風に自分の気持ちを話していました。
「僕は、小学校卒業試験という1回の試験で、進路が決まってしまうと思うと、ドキドキして不安な気持ちなんだ」
すると、この話を聴いていた、女の子が、「ふ~ん。そうなの。私にはその気持ちないみたい。もっとどんな感じなのか教えて」と、前のめりになり、男の子の不安な気持ちについて質問していました。
この男の子は、自分の気持ちを正直に開示し、聞いている女の子は、その気持ちは、自分にないので、理解するために質問をするという2人の対話に、本当に驚きました。女の子は、男の子の気持ちを、一切評価せず、あくまでも、相手の気持ちを理解するという姿勢で話を聞いています。自分の弱さを正直に言葉にしても、誰からも、弱いとか、ダメだ等の負の評価を得ることがないので、本当の心理的安全が実現していました。だから、誰もが安心して、自分の気持ちを正直に話すことができるということがよく解りました。
嬉しいことを共有することも楽しいですが、恐れや悲しみなどの気持ちも安心して共有できるコミュニティになることができれば、みんなが幸せに共生することができるのではないでしょうか。