活動報告

ACTIVITY REPORT
実績 実績

自立と共生を育むピースフルスクール

ピースフルスクールプログラム(以下PSP)についてご紹介します。

PSPは、オランダで生まれました。
オランダは、ユニセフ イノチェンティ研究所の調査で、世界一子どもが幸せな国です。しかし、PSPが生まれた当初のオランダは、少し違っています。

オランダでも、1990年代 学校では、いじめや子どもの問題行動が目立ち、学校風土の改革が求められ、シチズンシップ教育の必要性が生まれました。

憲法で教育の自由が認められているオランダでは、そのために様々なプログラムが開発されます。

PSPも、その一つで、ユトレヒト市がユトレヒト大学と連携し生まれたのが、このプログラムです。

PSPは、現在、15%をを超える小学校に導入されています。

日本では、オランダのイエナプランが有名ですが、イエナプランの導入比率は、3%ですから、その5倍の学校に導入されているプログラムです。

PSPの特徴は、子どもたちが、けんかやいじめの問題解決を自ら行うところです。
小学校5,6年生の中から選ばれた仲介役が話し合いで問題を解決するファシリテーター役を担います。

現在は、学校での取り組みだけではなく、地域にもこの取り組みが広がり、学校の仲介者が、地域の公園でのけんかの仲介をしたり、警察官もPSPを理解し、子どもたちのトラブルを仲介する姿勢で臨んでいます。

子どもたちは、学校でも、家でも、地域でも、けんかはいけないことで、けんかをしたら話し合いで問題を解決する責任があると考え行動するようになります。

親にもインタビューをさせていただいたのですが、家で両親が夫婦喧嘩をしていると、仲介しましょうか、と子どもに言われてしまうというお話もされていました。

オランダの親が教育のゴールとして何を重要視しているのかを教えて頂きましたが、
よい成績を取ることは、リストの6番目です。責任感や自分を大切にすること、他人を思いやるといった、人間としての基本を、まず最初に掲げています。これは、親としても反省すべきことですが、親のこのような期待に応える教育が、PSPといえます。

PSPは、民主的な社会を目指すオランダで生まれていますので、日本が、民主的な社会を目指す上で、学ぶべき点があると考えます。
それが、こちらです。

真の民主性は、コンフリクト、対立に基づくというものです。
民主的な社会とは多様な人々が安心して幸せに共生する社会です。多様性が存在すれば、対立を避けることはできません。
しかし、対立を恐れれば、多様性が、伸び伸びと存在することができません。
子どもたちは、多様な人々が安心して幸せに共生する社会のつくり方を、学校での実践を通して学んでいきます。

民主的な社会を創るために、子どもたちは、自立と共生の2つのことを学びます。

民主的な社会では、誰もが、自分の意見を持つ責任があることを学びます。
そして、人の意見に反対の意見を持つことは悪くないことを教わります。
コンフリクト、対立は悪くないことを学び、そのうえで、コンフリクトを話し合いで解決する力を身に付けます。
悪いのは、コンフリクトではなく、けんかであるということを子どもたちは学びます。

シチズンシップ教育には、3つの種類があります。

個人的な責任を持つ市民になることを学ぶシチズンシップ教育では、法律を守り、選挙に行く等市民としての責任を果たすことを学びます。

参加的市民になることを学ぶシチズンシップ教育では、ボランティア活動に参加するなど、共同体の活動に積極的に参加することを学びます。

正義を守る市民になることを学ぶシチズンシップ教育では、よりよい社会を創るためにアイディアを出し、例えば、NPOを立ち上げるなどの行動を起こせるチェンジメーカーになることを学びます。

そして、PSPは、この3つの市民力を育むシチズンシップ教育になります。

PSPの学習目標は、大きく5つに分かれています。
・民主的な意思決定
・対立の解消
・社会的責任
・多様性の受容
・民主制のリテラシー
各々にレッスンが用意されています。

またその前提として、社会情緒的能力を育みます。
PSPは、とても上手に、子どもたちの自尊心、自制心、共感力を育むことができるのも大きな特徴です。
最近では、非認知能力に注目が当たっていますが、PSPは、非認知能力を磨くプログラムであるといえます。

オランダでは、PSPで心を育むと、学力も向上するという説明を受けました。
PSPを導入している学校に通う子どもたちは、学校で、学力だけでなく、心も育んでいるという実感があることは確かです。

これは、人間の遂行機能の発達を示すグラフです。

遂行機能とは、目的を設定し、計画を立てて遂行するという人間の基本となる機能です。
人間の脳は、生まれてからの5年間、最も早く、最も著しく成長します。この期間に、「遂行機能」と「自制心」を発達させることが、生涯にわたるウェルビーイング(幸福)につながると考えられています。

グラフからは、小学校6年生で、大人と同じレベルに到達することも解ります。
PSPでは、小学校6年生で、けんかを話し合いで問題解決する力を求めますが、人間の発達の観点からも、正しい期待値の設定ではないかと思います。

こちらは、主催している未来教育会議で、有識者のお話を基に作成した人一生の育ちマップです。

幼保期、小学校期の子どもたちが、行動主体である主体性の感覚を確立し、他者・社会との関係の基盤を確立し、自分たちのことは自分たちで出来ると、実感できることに、PSPが寄与できることを願っております。

こちらは、OECDが、2003年に発表したキーコンピテンシーです。

PSPは、カテゴリー2の異質な集団で交流すると、カテゴリー3の自律的に活動するの2つの学習領域に関わるプログラムです。

この2つの学習は、環境問題に代表されるような難しい課題を解決することが求められる時代に、多様な利害関係者との対立を乗り越え、協働して問題解決を行う力や、変化する時代の中でも、自らのアイデンティティを確立し、幸せな人生を生きる力を育むことを目指します。

道徳教育指導要領を見ますと、PSPとの共通点が多くあります。PSPに含まれていないのは、D領域の生命や自然、崇高なものとの関わりに関するテーマや、C領域の中の一部である 伝統と文化に関するテーマです。

このため、道徳の授業として実践していただけます。
PSPでは、テーマの学びを、自らの行動に反映し、学校で実践できることを目指します。道徳の授業での学びを、日常での習慣にむすび付けることができるので、学びを促進しやすくなることも特徴です。

小学生のレッスンを紹介します。こちらはオランダのもので、日本では少し構成を変えていますが、内容は一緒です。青字の所が特徴で、自分の意見を持つこと、自分の感情を扱うこと、多様性を理解すること、上手にコミュニケーションが取れるようになることを学び、その総仕上げとして、対立を話し合いで解決する力を身に付けます。また、自らの意志で、イニシアチブを取り、行動することを学びます。

こちらは、幼児期の終わりまでに育って欲しい姿です。

青色が、PSPとの共通点です。
小学校の学習指導要領と同様に、PSPとの共通点が多くあります。
PSPに含まれていないのは、7の自然とのかかわり、生命尊重、8の数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚です。

こちらは幼児向けピースフルスクールのレッスン一覧です。

幼児から、自分の意見を持ち、伝えること、自分の気持ちや他者の気持ち、多様性について学び、やはり、小学生同様に、対立とけんかの違いを学び、話し合いで問題を解決する力を育みます。

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