OS21プログラム開発の背景
OS21コラムシリーズ第二弾は、OS21が生まれた背景をご紹介いたします。
日本の教育が、21世紀を幸せに生きる力を育む場所になっていないという危機感を抱き、市民活動として立ち上げたのが、未来教育会議です。
教育に関わる関係者は、誰もが、子どもたちの幸せを願い、子どもたちのために一生懸命教育に取り組んでいます。ところが、その結果、子どもたちは、創造性を開花することができないという現実を見た時に、これは、システムの問題だと気付きました。
そこで、マルチステイクホルダーで対話を重ね、ビジョンを形成することができないかと考え立ち上げたのが未来教育会議です。
丁度、文科省が学習指導要領の改訂に取り組んでいた時期でしたので、文科省の方にも会議に参加していただき、我々のレポートも常に共有致しました。デンマーク、オランダ、ドイツを訪れ、世界の教育にも触れました。
未来教育会議のHPでは、2030年 未来の企業・社会のシナリオ等の成果物もご覧いただけます。(https://miraikk.jp/)
この活動では、システム思考を活用し、多様なステイクホルダーとの対話から明らかになったことを紡ぎ、教育に起きていることを俯瞰することに挑戦しました。その中で、明らかになったことが、経済と教育が双子でるという事実です。創造性を開花できない学校の姿と、イノベーションが生まれない企業の姿には、画一性、数値による評価、ヒエラルキー構造、マニュアルによる標準化等、様々な共通点がありました。そこで、経済産業省に提案したのが、経済と教育の対話と共進です。
未来教育会議を通して、もう一つの大きな気づきがありました。それは、この国の教育は、幼・小・中・高・大の分業で運営されていて、誰も人の一生の育ちのことまでは、考えてくれていないことに気づきました。そして、もし教育に原因があったとしても、その結果責任は、教育ではなく本人ということになります。企業は、教育の課題に気づき、大学にあれこれ要請するのですが、人一生の育ちの視点で見ると、企業が大学に求めていることが、小学校に求めるべきことであることが理解されていません。
例えば、人がもっとも自然に、コミュニケーション力などの非認知能力を育めるのは、小学生の時なのですが、そういった議論にはなりません。日本に広める活動をしているオランダのシチズンシップ教育ピースフルスクールでは、幼児期から対話のレッスンを始めています。
ピースフルスクールからは、小学校高学年・中学校で顕在化するいじめの問題の原因は、幼児期から小学校4年生位までの教育にあることも学びました。幼児期から小学校4年生位まで、けんかやいじめには先生が介入できます。そこで、「○○ちゃんが痛いといっているから、あやまろうね」と先生が仲直りを支援します。このため、子どもたちは、自ら、人間関係の縺れを解消する力を身に付ける機会を持たないまま成長します。そして、先生が、いじめに介入できない年齢に達した小学校高学年の頃から、いじめが深刻化してしまいます。だから、どの年齢の子に向き合っていたとしても、人一生の育ちを理解していることが大切ではないかと思いました。
そこで、誰もが、人一生の育ちについて考えることができるように、人一生の育ちレポートを作成しました。こちらも、HPからダウンロード可能なので、ぜひ、お読みいただければと思います。(https://miraikk.jp/cat-03/3326)
リフレクションとの出会い
次に、OS21の要となるリフレクションとの出会いをご紹介いたします。
2003年にOECDが中心となり、世界を巻き込んだ教育改革が始まりました。日本では、PISAショックが話題になっておりましたが、PISAテストの報告書の序文を読み、衝撃を受けたことが始まりです。
これまでの教育を続けていても、変化・複雑・相互依存の時代に生きる子どもたちに必要な学びを、子どもたちは手に入れることができないという問題提起に始まり、一人では解決することができない複雑な問題を、多様なステイクホルダーと協働し解決する力を育む教育へのシフトが必要だというのが、OECDが、国際的な教育改革を仕掛けた背景でした。その目的は、持続可能な経済の発展と、多様性を包摂する民主的な社会の実現です。
その後、ビジネスの世界でも、変化、複雑、相互依存を表す言葉としてVUCAという言葉を耳にするようになり、SDGsも本格化しています。
2003年には、キーコンピテンシーも発表されています。3つのカテゴリーで整理されているキーコンピテンシーの中では、学力が占める比率は、9分の1です。その他は、テクノロジーの活用や、学んだ知識を応用する力、異質な人々と協働する力や、自律的に生きる力が含まれています。そして、このキーコンピテンシーの中でも、要となる力が、リフレクションと書かれています。
OS21は、OECDの定義を参考に、リフレクションを、このように定義しています。
『リフレクションは、自己を客観的かつ、批判的に振り返る行為です。
リフレクションは、物事に対して、これまで通りのやり方やものの見方をそのまま適応するのではなく、批判的スタンスで、経験から学び、考え行動する力でもあります。』
リフレクションは、未来を創る力であることも、重要な特徴です。
その後も、OECDは研究を続け、2019年には、学びの羅針盤2030を発表しています。生徒は、よりよい社会を創る主体と位置付け、2003年に発表されたキーコンピテンシーを、トランスフォーマティブ・コンピテンシーとして再定義しています。リフレクションは、Anticipation, Action, Reflection の3つの言葉の頭文字を取り、AARモデルの中に登場します。
学びの羅針盤でも、仮説を持って行動し、その結果をリフレクションし、成果を出すために学び続ける習慣の重要性を強調しています。
21世紀学び研究所では、経験から学ぶリフレクションとして、AARモデルの実践方法を紹介しています。