活動報告

ACTIVITY REPORT
実績 実績

実施レポート Vol.1『親子ダイアローグ』今泉 恵美子さん

プロフィール

執筆:

今泉 恵美子
一般社団法人21世紀学び研究所 リフレクションコーチ

 長年人材育成に関わり、教育プログラムの開発・提案および、講師として各階層研修やコーチング・チームビルディング等のテーマ別研修やコンサルティングを手掛ける。
 またキャリアコンサルタントとして、小学生からシニアまでのキャリア開発研修や面談により、 その人らしく輝けるキャリア形成のサポートを行なう。
 一方、子育て支援に関わり、「親を楽しむサロン」を共同主宰。その経験から、ワークとライフの相乗効果を生み出す「ワークライフ・エンリッチメント」の考え方を広めている。

「親子ダイアローグ」~子どもの主体性を育む対話力~とは

親子ダイアローグは、親も子どもも、ひとりの人間としてお互いを尊重し、お互いの考えや気持ちを聴き合い、相互理解を深めるために欠かせない実践です。
皆さんは、お子さんの考えや気持ちを知っていますか?
会話はしているけれど、深いところまでは聞けていないという方も多いのではないでしょうか。
自分で考え、自分の意見を持つには、それを話す場も必要です。子どもたちは、学校や社会では、その評価を気にして発言することもあるかもしれません。でも家庭の中では、お子さんが自由に自分の気持ちや意見を語ることができたら、考えること、意見を言うことが楽しくなるはずです。
親子ダイアローグでは、自分の意見はそれぞれ持ちながらも、相手の意見を評価判断せず、相手の背景にある経験・感情・価値観を聞き出すことにチャレンジします。
このとき必要なのが、「リフレクション」と「対話」の技術です。そしてこの2つの技術に欠かせないのが、「認知の4点セット」です。「認知の4点セット」は、意見・経験・感情・価値観に分けることで、自分や相手の物事の捉え方を客観視できるのです。

「もっと子どもの考えていることを知りたいけれど、どんな聞き方をしたらいいかわからない」「子どもには自分の考えや意見をしっかり持ってほしい」という親御さんにぴったりのツールです。

親子ダイアローグ企業向け公開講座では、子育て中の社員の方々を対象に、「認知の4点セット」を使い、リフレクションと対話の技術を実践をしながら磨いていくプログラム実施、3回シリーズで3期にわたって開催しました。

なりたい親をイメージしよう

日々忙しい皆さんは、ご自身の子育てを振り返る機会は少ないのではないでしょうか。1回目は、認知の4点セットを使い、ご自分の子育て観を振り返り、グループ内で共有していただきました。

  • 自分はどんな親になりたくて子どもにどんな風に育ってほしいかを考える良い機会になった。
  • 忙しい毎日、忘れがちな自分の思いを言語化することの大切さを感じた。
  • 「子どもの興味関心をサポートし自己決定できるようにしたい」と思いながらも実際は「危ない」からと言って子どもの機会を奪っていたことに気づいた。
  • 仕事をしていると子どもと向き合う時間を大幅に増やすことはできないが、限られた時間の中で大切に向き合おうと改めて思った。

また、認知の4点セットでお互いの話を聴いたことで、「大事にしていることが同じでも、経験によって価値観に違いがあることに気付いた」という声もありました。「家族の分だけいろいろな子育ての思いがある」ことを知ることは、子育ての視野を広げることにもつながっているようです。

子どもとの対話を楽しもう~絵本の読み聞かせ編~

実際に絵本の読み聞かせをし、その後に親子ダイアローグを体験していただきました。題材は、絵本でなくても映画鑑賞や旅行した後でも活用できます。

  • これまで表面的な会話をしていたため、子どもの目を通して見える世界がよくわからず、どんな感情を持っているのか気づきづらかったが、今回の手法を続けることで子どもの価値観を知り、子どものより良い理解者に近づける気がした。
  • 同じ経験(今回は同じ絵本を聴く)をしても、人によって印象に残った箇所や抱いた感情が異なることを具体的に体験することができた。

2回目のポイントは、「自分の評価判断を保留にして、相手の背景にある経験・感情・価値観を聴き取る」ことでした。親の経験を通して評価判断しない。––––これが思った以上に難しいのです。

私たちは性格も、育ってきた環境、経験してきたことも違うので、それぞれが違った価値観を持っています。同じものを見ても捉え方は異なります。つまり自分のメガネを通して見ているのですが、普段はこのメガネをかけていることを忘れています。

すると、子どもが自分と違った意見を言った時、「それは違う」とジャッジしてしまうことはよく起きるのです。あるいは、こんなケースもあります。

子どもが「この本、おじいさんが〇〇と言ったのが、面白かった」と言った時、「あー、ママもそこ面白かった、わかるわかるよ。だっておじいさんって□□だからね」と勝手に結論づけてしまうことありませんか。こう言った時点で対話は終わりです。「私も同じ」というのは、もはや自分にベクトルが向いています。同感と共感は違います。共感は「あなたはそう思うんだね」と受け止めること。一旦自分の意見を横に置いて、その子の経験・感情・価値観をじっくり聴いてくださいと、講座の中でもお伝えしました。それが自分のメガネを外すということです。

子どもはリフレクションの達人

リフレクションは、反省することではありません。経験を次にどう活かすかを考え、未来へつなげていく力です。

  • 日頃自分の出来ていない部分ばかりに目が向いていたが、ワークを通して、できたことに目を向けることができ、それを口にすることでこれからも前向きに続けようと思えた。
  • わが子は自分の気持ちを表現するのが苦手なため、親としての引き出し方法を具体的に知りたかったが、具体的なイメージがついた。

親御さん自身がリフレクションの効果を実感できたので、きっとお子さんへの言葉のかけ方や関わり方が変わっていくでしょう。

そして3回目ともなると、お互いに聴く力も磨かれたようで、「自分の誇らしいエピソードを伝えると、(グループメンバーが)全力で共感してくださるので、満足度が桁違いだった」という体験談を聞くこともできました。 子どもの主体性を伸ばすことの大切さを感じても、どのようにすればできるかがわからなかった方も、このシンプルな方法を知ることで、日常の中で、気軽に取り組むことができるのです。

親子ダイアローグの職場での応用

そして、この親子ダイアローグは、親子関係だけに効くのではありません。職場でも活用できます。

例えば、

  • 職場での意見の対立があり、いくら説得しても平行線のままだったが、リフレクションを取り入れることによって、その相手の意見の背景にも耳を傾け、その人が大事にしていることを聞いていくと、お互いの思いの共通点が見つかった。そこから場の空気が変わり、合意形成に繋がった。
  • 日頃業務で使うインタビュースキルは、難易度が高いので、もっとシンプルなやり方を知りたくて参加した。
  • 親子関係だけでなく、職場(特に管理職)の人にも、内省や傾聴スキルを身につけてもらったら、コミュニケーションの問題がだいぶなくなりそう。

日頃から認知の4点セットを使って、リフレクションと対話を繰り返していくと、上司や部下との相互理解が深まり、関係性も変わっていくのです。

そして実は、職場よりも、親子の対話の方が、身近でありながらも難しく感じます。なぜなら、親が「私が子どものことを一番わかっている」と錯覚しやすいからです。つい評価判断してしまったり、「わかるわかる」と結論付けてしまったりしがちです。ですから親子や夫婦間でこのダイアローグを実践していき、マスターできると、自ずと職場での対話にも応用できるようになります。

講座で学び合うことの意義

3回に分けて実施することで、毎回その週に扱ったテーマを実践していただくのですが、その際に出てくる質問が、さらに参加者の皆さんの理解を深めることに役立っていました。

例えば、次のような質問をいただきました。

  • 早速家で子どもに読み聞かせをし、対話をしたら、子どもが「主人公のある言動が印象に残った」と教えてくれて、そこから「今日友達と喧嘩してムカついたから叩いてしまった」という経験を引き出せた。こうした良くない行動を引き出せた場合には、どんな声かけをすればよいか

喧嘩した、叩いてしまったといった出来事は、お子さんの口からは言いづらいことですが、それを伝えてくれたということは、きっと安心安全な親子関係ができているのだと思います。まずは「よく話してくれたね」と言うことを伝えて、ムカついて叩いたという怒りの感情だけでなく、その前にある感情を聞いてみることを勧めました。悲しみなのか悔しさなの、きっといろんな気持ちがあったのだと思います。そこを聞いてあげることで、お子さんも気持ちの整理がつくでしょう。その上で、叩くことは良くないことも伝えつつ、叩かずに気持ちを伝えるにはどうしたらよいかを一緒に考えると、お子さんの考える力や自分をコントロールする力にもつながっていく。―そんなことをお伝えしました。

質問してくださった方だけでなく、多くの参加者が大きな気づきがあったと伝えてくれました。まさに参加者の皆さんが作り上げる学びの場です。

まとめ

親子ダイアローグを日々、家庭で取り入れることは、社会の最小単位である家庭の中で、自分の意見を否定されず自由に話せる場づくりになります。その経験は、「自分は自分でいいんだ」というお子さんの自己肯定感や「自分ならできる」という自己効力感を育むことにつながり、自主性を育てることになるのです。

最初からうまくいかなくても大丈夫。

いつもやろうとしなくていい。時間や気持ちの余裕のあるときだけでいい。

子どもは、お父さんやお母さんが、自分のことや気持ちを知ろうとしてくれていることが、きっとうれしいのです。気負わず焦らず試していただきたいです。

家庭の中で「親子ダイアローグ」が当たり前になる日が来ることを期待しています。

親子ダイアローグ講座の詳細はコチラ

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