【イベントレポート】ダイアローグ出版記念セミナー『共感を生む真の対話とは』

 一般社団法人21世紀学び研究所の代表、熊平美香(くまひらみか)の著書『ダイアローグ~価値を生み出す組織に変わる対話の技術~』の出版記念セミナーを開催しました。著書にまとめた対話のメソッドと、組織にインストールする際のポイントを押さえつつ、社員とお客様に共感と感動を広げている株式会社サンリオエンターテイメントの代表 小巻 亜矢(こまきあや)さんに、組織で対話をどのように活用されているか、その極意をお教えいただきました。本記事では、開催当日の様子をダイジェストでご紹介します。

 

登壇者プロフィール

株式会社サンリオエンターテイメント

代表取締役社長 小巻 亜矢

東京出身、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。1983年株式会社サンリオ入社。結婚退社、出産などを経てサンリオ関連会社にて仕事復帰。2014年サンリオエンターテイメント顧問就任、2015年サンリオエンターテイメント取締役就任、2016年サンリオピューロランド館長就任、2019年6月より現職。

 

一般社団法人21世紀学び研究所代表理事

熊平 美香(くまひらみか)

ハーバードビジネススクールMBA修了。日本マクドナルド創立者藤田氏の元、新規事業の立ち上げに携わる。GEの「学習する組織」のリーダー養成プログラム開発者と協働し、学習する組織論に基づくリーダーシップ、チームビルディング、組織開発を軸にコンサルティング活動を開始。未来教育会議を立ち上げ、教育ビジョンの形成を促進。昭和女子大学キャリアカレッジ学院長として、女性の社会での活躍や企業の働き方改革を支援する。

 

■プログラム

・イントロダクション

・パネルディスカッション

パネラー  :株式会社サンリオエンターテイメント 小巻 亜矢

一般社団法人21世紀学び研究所 熊平 美香

モデレーター:一般社団法人21世紀学び研究所 久保田 博(TIS株式会社)

・来場者を交えた対話会

 

【イントロダクション】人と組織の力を解き放つ「リフレクション」と「ダイアローグ」

 

一般社団法人21世紀学び研究所の代表、熊平による「出版記念セミナーの狙い」のメッセージと、パネルディスカッションのパネラーの株式会社サンリオエンターテイメント代表、小巻様の自己紹介からセミナーがスタートしました。

 

熊平:『ダイアローグ~価値を生み出す組織に変わる対話の技術~』の出版記念セミナーにお集まりいただき、ありがとうございます。私は以前『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』という本も書いています。内容を充実させるために2冊に分けていますが、リフレクションとダイアログはペアで実践するものです。

 

人生100年時代の社会人の基礎力としてリフレクションは重要であり、義務教育の中でも学ぶべき内容です。しかしながら、大人がリフレクションできないと子どもにも届かないため、私はリフレクションを広める活動をしてきました。

 

 

ダイアローグ(対話)にはリフレクションが不可欠です。対話とは「自己を内省し、評価判断を保留にして、他者に共感する聴き方と話し方」です。リフレクションができない人は対話の席には座れません。自分の考えや価値観を持った上で、自分と違う意見からも学び、問題解決や創造に向かう力になるものが対話だからです。

 

 

書籍の中では対話に必要な5つの基礎力を提案しました。メタ認知、評価判断の保留、傾聴、学習と変容です。これができない人がデーブルにつくと、対話の場が崩れていきます。一人ひとりが5つの基礎力を理解することで、創造的な対話が可能になるのです。

 

また、リフレクションの質を高める「意見」「経験」「感情」「価値観」というフレームワークを使うと、相手のことをより深く理解でき、関係の質も高まります。

 

ビジョンの共有も重要です。一人ひとりが大事にしている価値観が、ビジョンと結びついてはじめて自分ごと化されます。その連鎖でビジョンが「共有ビジョン」になっていく。そこにも対話が不可欠です。本日来場いただいたみなさまには、組織の対話力を高めるエバンジェリストになっていただきたいと思います。

 

【パネラー自己紹介:小巻さま】対話の力で「やる気のスイッチ」を見出す

 

 

小巻:株式会社サンリオエンターテイメントの代表をしている小巻と申します。大学を卒業し、サンリオグループに入社しました。退職後、専業主婦を11年したのちに社会復帰しています。

 

復帰先の化粧品を扱う会社で、さまざまな世代、さまざまな環境の女性と出会い、一人ひとりが経済的にも精神的にも自立していることが大事だと感じました。その思いからコーチングを3年半学び、その過程でリフレクションのパワーを体感する機会があったのです。一人でも多くの人がリフレクションして、対話を楽しみ、望ましい生き方ができればと思い、コーチングをしてきました。

 

やがて私自身が一番やりたいこともクリアになり、東京大学の大学院で自己理解について研究することに。仕事をしながら研究することをライフワークにしようと思っていましたが、古巣のサンリオグループから「テーマパークをやってみないか」と声がかかったのです。

 

私はエンターテイメントのプロではないし、組織開発のプロではありません。強みは「対話」ができることだけでした。赴任したテーマパークは業績も悪く、社員のモチベーションも高くありませんでしたが、対話を通じてやる気のスイッチを見出すことができたのです。最初は「対話なんて照れ臭い」といった感じの社員たちも、「この先どうすればテーマパークがよくなるか」という話を嬉々としてするようになりました。

 

もちろん全てが上手くいっているわけではありませんが、社長として対話を大切にしてきたので、この場を借りて少しでも熊平さんと共に対話の力を伝えていきたいと思います。

 

【パネルディスカッション】共感を生む真の対話とは?

 

イントロダクションのあと、株式会社サンリオエンターテイメントの小巻 亜矢様と、一般社団法人21世紀学び研究所の熊平 美香、久保田 博(TIS株式会社)のパネルディスカッションをおこないました。そのハイライト部分をご紹介します。

 

サンリオピューロランドがダイアローグを大切にしている理由

 

小巻:当社では、ウォーミングアップ朝礼や1on1、対話フェスという社内イベントなど、ありとあらゆる場で対話(ダイアローグ)をしています。今日、この会場に向かう車の中でも会社のスタッフと対話をしてきました。

 

対話の中で気をつけているのは「やさしく話す」「あたたかく聞く」という姿勢と、相手の感情を意識することです。例えば「今の気持ちは何色?」と聞いてみたりすることで、その人の感情やモチベーションをキャッチする時間になればと思っています。

 

熊平:話を聞いてもらったスタッフの方にはどんな変化が起きますか。

 

小巻:「社長、この間言われたことを試してみました!」とフラットに声をかけてもらえたりするとうれしいですね。対話を経て、二人の関係性は前進していると感じます。

 

熊平:小巻さんは東大でリフレクション(自己対話)の研究をして、組織変革にも活かしています。対話を通じて組織を変えるためには、どんなステップが大切ですか。

 

小巻:大前提として、組織は簡単に変わらないので、自分の心を折られないことが大事です。私が社長に就任した当初のサンリオピューロランドも、最初から対話ができる組織ではありませんでした。殻に閉じこもる人も、斜に構える人もいたんです。毎日、やさしく話す、あたたかく聞くということを続けました。「否定しない」などのグランドルールを定めることも大事ですね。

 

熊平:人間を信じないと対話は始まらないと私は思いますが、小巻さんはどう思いますか。

 

小巻:相手と結婚するわけでも、親友になるわけでもないので、必ずしも好きになる必要はないと思います。ただ、対話を通じて、自分を成長させたいと考えることが大事だと思いますね。

 

久保田:例えば、1on1をするとき、上司と部下の関係性をどうしても意識してしまうと思うのですが、そこは意識しないほうがいいのでしょうか。

 

小巻:それはある程度仕方がないことです。例えば、1on1をするときに「お互いよりよく知り合って、成長するための15分だよ。評価には関係しないよ」と最初に宣言することで、心理的安全性をもたせるといいですね。繰り返しやれば慣れてきます。いつか「お互いのためにやってよかったね」と思える日がきたら、それでいいんです。

 

自己対話を深めることで、自分の中にある「宝物」の存在に気づく

 

 

熊平:ところで、小巻さんがリフレクションに興味を持ったきっかけは何でしたか?

 

小巻:コーチングを学んだ初日、人生で実現したいことや自分の価値観についての問いを受け、全く答えられなかったんです。それから3年半の学びを通じて、自分の内面と向き合い、自己対話を深めていく中で、ネガティブな感情も自分にとっての宝であると気づきました。それをリフレクションの材料として自分の成長に活かせると実感したので、自己対話を大学院でより深く学びたいと考えたのです。

 

熊平:そのお話に私もとても共感します。というのも私は子育てをしていたころ、「自分は何者なのか」と問い続けていたんです。私は母親として自分がやらないことを子どもに求めないと決めていました。子どもには自己実現してほしいと思ったのですが、自分がしていないことに気づいてしまったのです。それで、教育の世界に飛び込みました。その中でたまたまリフレクションに出会ったんです。リフレクションをすればするほど、自分が何をやりたいのか、何がうれしいのかがわかってくる。自分を生かす方向に自分を持っていけるんですよね。

 

リフレクションとダイアローグが、コラボレーションのエネルギーを高める

 

久保田:リフレクションには素敵なエネルギーがありますね。そのエネルギーをつなぐのが対話で、「共感」が芽生えるとシナジーが生まれるんですね。

 

小巻:「共感」についていうと、人間には多様性があるということをまず理解することが大事だと思います。目の前の人をまるっと受け止めるなんて無理です。けれど、共感できるポイントは必ずある。この時代になぜ同じ会社で働いているのか。そのご縁の意味と、「何のためにこの事業をしているのか」を考えたときに共感が生きてくるのです。

 

久保田:企業成長とリフレクションの関係についても聞いてみたいです。

 

小巻:企業のベースは人です。一人ひとりのパフォーマンスが最大化したら、企業も成長します。言い換えると、企業成長のためには、一人ひとりがリフレクションを通じて、自分の目的をみつけて、成長にコミットすることが不可欠です。

 

熊平:会社には使命があり、目的を全うするためにあります。当然ですが、同じ目的のためにいろんな連携をしないといけない。部門の壁を乗り越えなくてはいけない。コラボレーションのエネルギーを高めるためには、リフレクションとダイアローグが必要なのです。結果が出ないと誰も幸せにならないので、みんなで結果を出すための関係性を築いていきたいですよね。

 

【来場者を交えた対話会】対話を深めるためのヒント

 

 

イベント後半では、来場者からの質問に対して、小巻様と、熊平が回答しました。対話を深めるためのヒントが盛りだくさんの質疑応答です。

 

来場者:1on1をするとき、どうしても上司と部下の関係を意識してしまいます。部下から対話を進めるとしたらどのような働きかけをしたらいいでしょうか。

 

小巻:「今日は自分から対話を進めていいですか」「自分が進めたらどうなるか実験させてもらっていいですか」と上司に提案してみてください。対話を終えた後、2人の関係性がどう成長しているかというのが大事です。勇気を出して自分から上司に働きかけるだけでも、すごく成長すると思います。

 

熊平:1on1は本来、部下のための時間です。だから、部下がどういう1on1をするのか設計するのは健全なこと。「ちょっと一緒にやってみませんか?」と自分から上司に提案してみてはいかがですか。

 

来場者:小巻様への質問です。対話の相手との共感の接点を探るために意識していることはありますか?

 

小巻:すごく簡単な例を挙げると、好きな食べ物とか、好きな物を尋ねると共通点が見つかりやすいかもしれないですね。同じ会社の相手なら「なぜこの会社で働こうと思ったの?」「この仕事をして一番苦労したことは?」など組織に紐づく質問をしてみてください。

 

来場者:対話をしているときに空気が重くなってしまったとき、どのように方向転換しているのか教えてください。

 

小巻:相手の悩みが深いのなら、「一人で抱え込まず、話してくれてありがとう」と感謝を伝えたり、「必要なところは総務に相談してね」と促したりしていますね。その後、悩みに対してしっかり時間をとって話したいのであれば、連絡をもらうようにします。そうすることで、ちょっとでも相手がスッキリしてくれたらうれしいですね。

 

来場者:毎日、忙しい中でどのように自分のビジョンを確認しているのか教えてください。

 

小巻:寝る前に1日のことを振り返ったり、朝仕事に向かうときに自然とリフレクションをしたりしています。「何のために自分はここにいるんだろう」「今じぶんにできることはなんだろう」「もしやらなかったらどんな後悔をするだろう」とシンプルな問いを自分に向けるとやる気が出てくるんです。

 

来場者:小巻さまのお話の中で「成長」という言葉がたくさん出てきました。「成長」をどう捉えていますか。

 

小巻:ポジティブな変化ですね。必ずしも現時点でプラスである必要はなくて、マイナスでも大丈夫です。高くジャンプするためには、しゃがんで力をためることも大事。悩んでいる相手にも、「ジャンプするための一歩ができたね」と伝えてあげたいと思っています。

 

来場者:対話を増やす取り組みをする中で、現場から「忙しいのに何をやらせようとしているんだよ」という空気を感じることがあります。

 

小巻:質問者さんと同じ思いを何度も経験しています。朝礼の仕組みを作ったけれども出てこない人がいました。「その時間を業務にあてたい」という声も。対話を重ねて少しずつ良い影響が広がっていくのを待ちながら取り組んできました。

 

当然のことですが、当社の場合は朝礼のために30分前倒しで出社してもらうので、きちんと時給をお支払いしました。「人件費がかさんだ分、取り返せるんですか」という意見もあったりして、心が折れそうなこともありましたが、「半年やらせてください」と言って続けたところ、みるみる組織が変わっていったのです。本当に笑顔が増えて、連携が取れるようになった。なので、質問者さんも大変だと思いますが、辛抱強く頑張ってください。

 

 

久保田:ピューロランドに行っていただくと、対話による経営効果を実感いただけると思いますので、ぜひみなさん、ピューロランドに行ってみてください。

それでは、これで対話会を終了したいと思います。小巻さん、熊平さん、すてきなお話、ありがとうございました。

本イベントのグラレコもぜひご覧ください。

 

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イベントレポートは以上です。ダイアローグやリフレクションについてより深く理解したい方はぜひ、『ダイアローグ 価値を生み出す組織に変わる対話の技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をご覧ください。