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【第5回イベントレポート】「共感型リーダーシップの鍛え方  〜自律的な組織をつくるリーダーに必要なこと〜」

21世紀学び研究所は、『VUCA時代のチェンジメーカーズ ~チェンジのためのアイデアとツールを知る・使う・学び合う~」をコンセプトにイベントを開催しています。

 

2月27日に開催された第5回目は『共感型リーダーシップの鍛え方」がテーマ。VUCA時代に、新たに注目されているのが“自律型”という組織のあり方です。そして、自律型組織を創るリーダーには“共感力”が必要になってきます。今までどおり指示命令だけで人を動かすことは難しく、共感を生むビジョンに人は集いますし、メンバーの動機を見出し共感することで、メンバーの潜在的な力をより活かすことができるようになります。さらに、複雑で正解のない時代に、多様なメンバーに共感し、知恵を出し合い、創造的なチームをつくることも求められます。

 

ゲストである一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事の吉田典生氏は、マインドフルネスやEI(感情的知性)を基盤にした生成的な対話を通じたコーチ育成プログラムMBCC(Mindfulness Based Coach Camp)を展開するとともに、そのエッセンスを日常の会話に広げる『共感コミュニケーション』を提唱しています。今回は人々が良い関係性を育むための共感とは何かということを含めて、マインドフルネスリスニングのワークショップを実施いただきました。

 

また後半では21世紀学び研究所代表の熊平より、共感型リーダーシップを身に着ける導入として、共感を伴う対話のワークショップを実施しました。

 

 

<INDEX>

(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート 理事 吉田 典生氏 より)

1. 共感コミュニケーションとは

2. 共感の土台となるマインドフルリスニング

 

(21世紀学び研究所 代表 熊平美香 より)

3. 共感を伴う対話の実践方法

 

 

  1. 共感コミュニケーションとは

 

吉田: 今日は、相手に共感することは大事、という話をしていきたいと思います。そもそも、僕のこのメッセージに共感してくださる方、どれくらいいらっしゃいますか。共感するという方は、この共感という感覚とは一体何か、説明できますか。意外と難しいと思います。そこで、ここにある1枚の絵を使って、共感とは何かを考えていきましょう。まずは絵をひと目見て、感じたことを自由に書き出してみてください。

 

次に、書き出した言葉の中で、この絵の中の人物に対する共感に当てはまりそうと感じるものを、隣の方とシェアしてみてください。共感とは何かということはあえて定義していませんので、皆さんの感覚で結構です。どんな共感らしいことが出てきたか、どなたか伺ってもよいでしょうか。

 

代表者A:2人ともお互い頑張ってるな、大変そうだなという意見が共通して出てきました。

 

代表者B:この子たち、辛そうだなと表情から感じた部分と、この状況を見て頑張ってとか、急いでと、こちら側の感情とが出てきました。

 

吉田:ありがとうございます。こうしてみると、共感というのは2種類に分類できます。1つは、この絵を一歩引いて見て「大変そうだ」「頑張っているな」というような、状況を理解した上で出てくる共感です。自分の認知機能が働いているからこそ理解ができることですので、これを『認知的共感』と言っています。それから「岩が重い」「辛い」と、絵の人物そのものになったような感覚を持った人もいると思います。この感覚を『情動的共感』と言います。ワークを通じて、両方の共感が出てきた方もいれば、片方だけが出てきた、という方もいるかもしれません。

 

実は共感するときは、この2種類の観点を両方持っていることが大切です。例えばどちらかに偏った共感しか持てないとすると、どうなるでしょうか。認知的共感だけになると、“評論家モード”になりがちです。メディアで流れる情報によくありますが、極端に言えば少し他人事のような、状況を理解はしているものの、発言するだけで行動が起きないということが多くなります。逆に情動的共感だけしかできず、相手の気持ちそのものを自分に投影してしまうとどうなるか。相手が大変な状況になると、一緒に感情に溺れてしまうことが多いです。すると、実際に相手を助けることができないですよね。情動感染、あるいは共感疲労という表現をすることもありますが、セラピストやカウンセラー、あるいはコーチングをする方などは、クライアントに対し情動感染が起きないように、一定の距離感を取りながら共感をしていく訓練をします。

 

2つのバランスが取れているときは、相手の状況がきちんと理解でき、かつ自分が相手の気持ちを一緒に味わうこともできる状態です。周囲の人の感情を理解し、適切に対応できることが、共感コミュニケーションができていることになります。これができると、自分ができることをやろうという、内発的な動機が沸き起こったりもします。自ら行動を起こすためにも、認知的共感、情動的共感の両輪が必要だということです。

 

 

  1. 共感の土台となるマインドフルリスニング

 

吉田:では、私たちの職場、地域、家庭にあるコミュニケーションをイメージしたときに、こうした共感はバランスよく生まれているでしょうか。どんなことが実際に起きているか、どなたか聴かせていただけますか。

 

代表者C:私がいる職場は保育関係だからか、情動的共感に偏って、疲れてしまうことが多いです。スタッフ間のコミュニケーションでは、共感力が足りないというか、バランスの悪さを感じることはあります。

 

吉田:そうですよね。仕事内容の影響もあれば、個人差もあるし、同じ人でも時と場合によって共感が発揮できる状況とそうではない状況もあって、非常に難しいですよね。では、どうしたら共感コミュニケーションができるのでしょうか。僕たちが大事だと思っているのは“肯定ファースト”です。人は誰しもどこかで「肯定されたい」と思っているはずなんですね。例えば仕事をしていて、企画書を持って行く場面で「甘いな」「言ったことと全然違うじゃないか」とすぐに否定されてしまうことがあったり、逆の立場でついそんなことを言ってしまうこともありますよね。でも肯定することが一切できないと、相手との関係性を築くことが難しくなって、どんなに“正しい”ことを言っても伝わらず、ますます亀裂が深くなったりします。

共感を生むための第一歩は、何があってもまず相手の話を受け取ってあげることです。甘やかすという意味ではなく、発言した相手の存在そのものを受け入れること。そこから必要な改善や指導が生まれ、関係を構築しやすくなります。

 

具体的には、とにかく、相手の話をまずは聴くということです。こう言うと「人の話、ちゃんと聴いてますよ」という反応が返ってくることが多いのですが、例えば話を聴きながら「どうやって答えを返そう」「次の質問はどうしよう」とか、「うまい答えが見つからないけど、頼りない上司だと思われるのは嫌だな」ということが思い浮かぶこと、結構ありませんか。これでは話を聴けている状態とは言えないのです。共感型コミュニケーションを本当に実践している人は“相手の存在そのもの”に関心を向けています。上司と部下、同僚同士、友人同士、家庭内、いろんな人とコミュニケーションをとっているときには、何らか相手に関心を持ちつつも、途中で他の思考や感情が出てきたり、あるいは自分の関心事をベースに話を聴いてしまうことがあるかもしれません。部下との会話では、話の内容よりも実際に起きている問題そのものを解決することに気が取られたり、仕事の段取り、出さなければならない成果の方が気になってしまうこともあるでしょう。でも、相手の存在そのものが関心から抜け落ちてしまうと、関係性の質が向上するための流れが遮断されてしまいます。逆に、きちんと相手に関心を向けて話を聴いていると、相手の中には自然と、受け入れてもらっているという『受容』の感覚が生まれてきます。それが自分がここに存在していいんだと、相手の自己『肯定』につながるわけです。ここから相手との双方向のやり取りが初めてスタートします。

 

そして、共感コミュニケーションには前提となる考え方があります。それは“無知の知”です。付き合いが長い相手に対しては特に「相手はこう判断しているだろう」と、先入観をもとに話を聴いてしまいがちです。それを一旦脇に置いて、自分には知らないことがたくさんある、相手と私は別の人間なのだから、どんな相手であっても、自分に知らないことがあるという前提で話をしていくことが大事なのです。

 

まっさらな気持ちで話を聴けるようになるために、第一歩として提供するトレーニングが、マインドフルリスニングです。2人1組になって、まずお互い気軽な内容で、相手に聴いてほしい話題を決めます。まず片方の方が、時間を決めて話をします。話し方などは特に何も考えず、とにかく好きなことを話してください。そして聴き役は、ひたすら、相手の話に注意を向けて聴き続けてください。意見や感想は返さず、相手から発信されものをひたすら尊重します。ただ、うなずきだけは自然に入れてあげてください。うなずくことによって、相手が話をする勇気になる場合も多いですし、関心を向けていることが伝わって、関係性を築くことにつながるからです。

 

やってみると、結構難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。相手の話に対して、評価や判断を保留し、私は相手のことを知らないという意識を持って、ただただ聴いてみる。不自然なやりとりだと思う方もいるかもしれませんが、お互いにこうしたスタイルで会話することに予め合意が取れていると、形式的な会話がだんだんパワフルなものになっていくんです。30秒でも1分でもいいので、部分的にでも日常会話に用いることをお勧めしたいです。

 

共感コミュニケーションを実践するためには、私は3つの柱が必要だと考えています。自他の違いを知る『違いの見える化』、自分の内面の感覚に気づく感性を磨き、セルフマネジメントを行う『反応への気づきと制御』、そして会話の実践をする『傾聴・確認・融合』です。私からは今日は最後のパートの一部をお伝えしましたが、より本格的な内容について、皆さんにじっくりご紹介できる機会があればと思います。

 

 

  1. 共感を伴う対話の実践方法

 

熊平:ここからはOS21より共感型リーダーシップの鍛え方についてお話をしたいと思います。まず、今日の話から感じたこと、自分の思考や感情を客観的に捉えるために認知の4点セットという型を使いながら、リクレクション(自己内省)を行なっていきましょう。

 

吉田さんの話を伺って何が1番印象に残ったか、頭の中で1つ思い描いてください。そしてその『意見』を持った背景にはどんな『経験』があるのか、その経験に紐づいている『感情』とは何なのか、自分が大事にしたいと思っている『価値観』は何かという、4つの枠組みで書き出してみてください。例えば、今日の話を聴いて「共感コミュニケーションのポイントは、自分の評価、判断を保留することなんだな」という『意見』を持ったとします。こう思う背景には、「部下と話をするときに傾聴を心がけてきたが、時々話が噛み合わないことがある。理由がわからなかったが、実は評価、判断を保留にして話を聴くことができていなかったようだ」という『経験』があるかもしれません。そんな風に思うのは「傾聴しているつもりが、できていないのは残念だ」という『感情』を持ち、実は「自分が相手との相互理解を大事にしたい」という『価値観』があるからなのかもしれない。だから、吉田さんの話のこの部分が刺さった。このようにご自身の考えを整理していきます。

 

このフレームは、特別な時にしか使用できないわけではありません。例えば、犬が好きか嫌いかということについて考えたとき、好きという『意見』を持つ人は、犬を飼った『経験』があって、喜びや安心という『感情』があり、犬は可愛くて癒しをくれるという『価値観』を持っている。でも犬が嫌いという『意見』を持つ人は、噛まれて怪我をした『経験』があって、犬は怖いという『感情』を持つようになり、近づくと危ないという『価値観』を持っているかもしれない、という風に整理ができます。このように私たちは無意識のうちにこの枠組みで物事を考えているのです。それを意識化するための枠組みが、認知の4点セットです。

 

 

自分の考えを整理してみたところで、次に相手と対話をしていく、ダイアログのパートに入っていきます。我々は、対話は意見の違いを聴くのではなくて、相手の意見の“背景”を聴くということが重要だと思っています。そのために、対話でも認知の4点セットを使って自分のこと、相手のことを客観的に捉えることが重要です。

 

では、最近の出来事や出会った人で、自分が賛成できないと思うこと・人を、先ほどのフレームで書き出してみてください。まず『意見』を書き出し、なぜ賛成できないのか、賛成できないと思う背景には、どんな『経験』があり、どんな『感情』が紐付いていて、そこから見えるあなたが大切にしたい『価値観』は何かも、書き出してみましょう。2人1組になって、シェアしてみてください。

 

では今度は、その意見に“賛成する人”になったつもりで、同じワークシートを記入してください。つまりその意見に賛成する人の立場だったら、実はこういう『経験』や『感情』『価値観』があるのではないか、ということをイメージしながら書いてください。どんな気づきがあったか、教えていただけますか。

 

代表者D:この枠組みで考えると、相手の立場で考えて、実はこんなことで困っていたのかなとか、こんなことを恐れているのかもしれないということが浮かんだので、自分も別のアプローチをしてみようかなと思えてきました。

 

熊平:ありがとうございます。他者に共感する対話(ダイアログ)のポイントとは何かというと、自分の考えを客観視する自己内省を行い、その上で相手の『経験』『感情』『価値観』に焦点を当てて話を聴くということです。相手の考えをイメージするということは、相手の世界に入るということ。そのためにはまず自分の感情をコントロールしていくことが必要なんですね。

 

 

私たちは人の話を、『意見』だけを聴いて自分の経験に当てはめて聴き、解釈してしまいがちです。つまり、聴いているようで聴いていないことも多いんです。自分の評価・判断を保留にするということは、まず自分の考えについて客観視することが必要です。その上でそれを保留し、“無知の知”を持って、相手の話をまっさらな状態で、背景から聴いていく。非常に難しいことですけれども、それができるようになると自分の知らない世界から学ぶことができます。

 

そして対話を発展させていくと、共創の世界にもつながります。例えば、誰かが一方的に話す講義形式や、意見と論拠を主張し合うディベートのような場では、意見と意見を闘わせているだけで、その場に出てきている考え以上のものは生まれません。しかし今回のように、相手の意見の背景までを汲み取って対話ができるようになると、自分の中に新たな気づき、変化が生まれたりしますよね。それに、お互いの価値観を融合させたアイディアを生み出すこともできるようになります。これが未来を変える力になると、私たちは思っています。だからこそ、対話は大事なのです。

 

 

リーダーシップを発揮するときは、何かを発言することが多くなります。すると必ず賛同しない人が出てきますよね。このとき、指示命令で人を動かすのは自律型組織とはいえません。だからこそ相手の意見をしっかりと聴き取り、理解し、その上で自分の考えを発信し、新たなものを共創していく共感コミュニケーションが必要だと思います。

 

今回はアイディア・ツールとして、認知の4点セット、リフレクション、ダイアログをご紹介しました。私たちのプログラムもバージョンアップしていきますので、ご興味がある方はぜひ本格的なプログラムにもご参加ください。ありがとうございました。

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